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  • ひとつぶ「ひとつぶ製 木版画文香」

香りを届けてこそ手紙、とぼくは思う

杉山正博さんがこの記事を書きました

大切なあの人への手紙に、文香を添えて

「手紙は、プレゼントのようなもの。便箋や封筒はどれにしよう、切手はこの柄にしよう...などと、選ぶ時間も楽しいんです」

そう、「ひとつぶ」の根岸紅子(あかね)さんが話すように、相手のことを思って綴る手紙に、まさに小さな贈り物のように添えるのが、“文香”(ふみこう)です。文香とは、お香を和紙片などで包んだもの。文香が入った手紙の封を開けた瞬間、心地よい香りが広がります。何百キロという距離を超えて、大切な人に香りを届けられる。そんな文香を、根岸さんは10年以上にわたりつくり続けています。

小学生のころ、隣の席の仲良しの子に毎日のように手紙を渡したり、クラスが別々になった友だちに手紙を届けにいったり、「ずっと手紙が好きなんです」と語るように、根岸さんは結婚後、子育てをしながら、手紙をテーマにした「みずいろ」という小さな雑貨店を、名古屋市の本山にオープンしました。そのお店を通じて出会った人も含め、国内外にペンパルがいる根岸さんは、多くの手紙を書き、文香もたくさん使うので、「自分でつくってみよう」と制作を始めたそうです。

根岸さんが、長年愛用している「満寿屋」の原稿用紙
根岸さんが、長年愛用している「満寿屋」の原稿用紙

もともと絵を書いたり、手芸をしたり、ものづくりも大好き。長男の成長日記を手帳に書いては、ブログにアップしていた根岸さんは、「一度、ものづくりをしっかり習ってみたい」と、お店の近くで開かれていた版画教室へ。そこで、「彫刻刀を鉛筆だと思って、自由に彫ればいいんだよ」と語る先生から、版画の楽しさを教わりました。そのとき、ぜひつくってみたいと、頭の中に鮮明なイメージが浮かんだのが、飼っていた黒いウサギをモデルにした文香です。「木版画ならではの木の表情が、ウサギの毛並みを表現するのにぴったりだと思ったんです」

それからというもの、さまざまな紙を試し、香りを通しつつ強度も十分な純楮紙(じゅんこうぞし)と出会います。糊も、長期間剥がれないうえ、香りをじゃましない無臭のものをセレクト。さらに、肝心のお香自体も、さまざまな種類の中から、爽やかで懐かしい香りの「白檀(びゃくだん)」を、京都から取り寄せています。

「最初は商品化するつもりはなくて、試行錯誤するのが、まるで実験みたいで楽しかったんです。しかも、手づくりの文香を手紙に添えると、とても喜んでもらえる。そうこうするうちに、『これは絶対に販売したほうがいいよ!』と背中を押してくださる方がいて、まずは自分のお店に並べ始めたんです」

それは、初めて文香をつくり始めてから、1年近くが過ぎたころのことでした。その後、子育てもあり、3年ほどお店を休んでいた間も、注文をもらったり、イベントに声をかけてもらったりと、文香づくりは途切れることなく続けてきました。そして、7年前に同じく名古屋市の本山に、「or dans le sable(オーダンルサーブル)」という雑貨店を再オープンしました。

「or dans le sable」とは、「砂の中の金」という意味。日常の中でキラリと輝くような定番品をそろえる
「or dans le sable」とは、「砂の中の金」という意味。日常の中でキラリと輝くような定番品をそろえる

これまで根岸さんが手がけてきた絵柄は、数百に及びます。長男が動物好きなこともあり、各地の動物園に出かけては、さまざまな生き物をスケッチ。このパンダは和歌山のアドベンチャーワールドの、これは神戸の王子動物園のアカハナグマなど、それぞれにモデルになった動物がいます。近くにある、「東山動植物園」にも、よく足を運ぶそうです。

下絵を描くときに大切にしているのは、版画ならではの“黒”が生きるデザインにすること。「これまで色がついた文香も手がけてきましたが、今は基本である“黒”を美しく刷りたいと思っています」

文香の材料と道具。納得のいく和紙を見つけるところが、もっとも時間がかかったそう
文香の材料と道具。納得のいく和紙を見つけるところが、もっとも時間がかかったそう

小さな文香をつくるのに、版木を彫るところから始まり、和紙をカットし、そこに絵柄を刷り、丸1日乾かし、すり潰した白檀を挟んで糊で貼り、乾かし、図柄の形に切り取り、裏側を刷って乾かすと、何日もの工程を重ねます。さらに完成した文香を、半紙を封筒の形に折って包み、レトロな切手を貼って封をするところまで、すべて手作業で丁寧に行っています。

丸一日乾かす工程も重要。毎日コツコツと手作業で制作している
丸一日乾かす工程も重要。毎日コツコツと手作業で制作している

「同じ版木を使っても、その日の天候やちょっとした水の量、力の入れ具合によって、毎回、刷り上がりがほんの少しずつ違う。一つとして同じものができないのが、版画の難しさであり、面白さだと思うんです」

こうして、手作業で大切につくられた文香の動物たちは、どれも穏やかな表情をしていて、手に取ると和紙のやさしい手触りと、白檀の爽やかな香りも相まって、心がほっと和みます。

「相手のことを思って、手紙に香りを添える。文香という長年続いてきた文化があることを、知ってもらえたら嬉しいです」

手紙は、LINEやメールと同じ、連絡手段のひとつ。肩肘張らずに、おしゃべりするような感覚で、手紙のやり取り自体も楽しんでもらえたらと根岸さんは願います。

最近、そういえばずっと手紙を書いていないな……という人は、根岸さんが丁寧に手づくりする文香を、手紙を出すきっかけにしてみませんか? 大切なあの人に、思いを届けるのもいいと思います。 爽やかな白檀の香りとともに。

(文章:杉山正博 / 写真:柳川夏子、杉山正博)

ひとつぶ「ひとつぶ製 木版画文香」

ご購入の前に

  • 木版画文香は和紙にひとつひとつ手刷りをして作っています。刷りの具合など、画像と誤差がありますこと、予めご了承ください。
  • 木版画用の黒い絵の具で刷っているため、他の紙にインクがついてしまう場合があります。文香の入ったお手紙に何か絵葉書や写真など同封される際や、本に挟んで栞として使う際は、汚れないよう合紙を入れていただくと安心です。

商品情報

素材

純楮紙、木版画絵具、お香(白檀)

寸法
  • 「ことり」3つセット/W78mm×H55mm/3g

  • 「うさぎ」3つセット/W98mm×H51mm/3g

  • 「ぺんぎん」3つセット/W33mm×H63mm/3g

  • 「トリ2羽」3つセット/W67mm×H44mm/3g

  • 「パンダ」3つセット/W73mm×H51mm/3g
ことり
ことり
うさぎ
うさぎ
ぺんぎん
ぺんぎん
トリ2羽
トリ2羽
パンダ
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